治療法・種類
発達障害の疑いがあったり、診断を受けている場合には、障害による困難を少しでも軽減するために治療が必要となってきます。 治療法には、薬物療法や療育があります。薬物療法
子供は療育や環境整備などが中心となりますが、発達障害の治療や生活しやすくするために、必要に応じて薬物療法を行う場合もあります。 薬物療法は副作用が懸念されますが、症状の改善のために必要な場合にのみ使用します。 次のような症状を改善する薬が使用されています。 ・多動・衝動性 ・情緒不安定 ・睡眠障害 ・強迫症状 ・対人恐怖 ・感覚過敏 ・攻撃性・自傷 ・抑うつ など
療育
言葉や身体機能など、発達に遅れの見られるお子さんについて、生活への不自由をなくすよう「専門的な教育支援プログラムに沿ってトレーニングをしていこう」とするものが”療育”です。目的や分野については、さまざまな種類があります。 特に、早期発見・早期療法が望ましいとされており、それは言葉や社会性など、それぞれの能力を習得する時期に近い段階で療育を開始することで、障害による負担がお子さんもご家族も軽減されやすくなるとされています。一般的には、年齢が低い段階で、適正な療育を始めると、その後の社会適応力も高くなると言われています。 しかし、「いつまでに始めなければならない」「もう手遅れでは・・・」ということはありません。 療育は「これが正しい」「この方法で治る」というものではなく、お子さんの個性を尊重し、適性を見ながら長期的に行っていくものです。
自閉症
自閉症の治療で、自閉症の根本を治すことは出来ません。しかし、症状が緩和できるため、本人と家族の負担を軽減することができます。- てんかんに対する治療
- 自閉症の約20~30%の割合で、てんかん発作が起こるとされています。発作を繰り返す場合には、治療が必要となります。 てんかんに対しては、薬物治療が行われ、抗てんかん剤が用いられます。
- 睡眠障害に対する治療
- 自閉症には睡眠障害が起こりやすく、深夜(明け方)まで寝ない・早朝に目覚める・不眠などの症状があります。 睡眠障害は発達や情緒にも影響してくるので、日中たくさん体を動かし、夜は眠りやすい環境をつくるなど、工夫が必要となります。 環境を整えても睡眠障害が改善されない場合には、薬物治療が行われます。 入眠剤や、情緒不安定が睡眠障害の原因となっている場合には安定剤などが用いられます。
- 精神病様症状に対する治療
- 思春期や青年期に多いのが、学校や職場でのストレスによる精神病様症状です。幻覚や妄想などの症状があり、過度の緊張状態になる場合もあります。 このような場合には、抗精神病薬などが用いられます。抗精神病薬は自傷行為に対しても使用されます。
アスペルガー症候群
アスペルガー症候群の根本を治す治療法はまだありません。しかし、社会生活を送りやすくするために、症状を軽減する心理療法などを行う場合があります。 また、アスペルガー症候群は誤解をしやすく、誤解を受けやすいため、対人ストレスが大きい場合が多いことから、抑うつや不安の症状が現れる場合があります。 この場合、抗うつ剤や抗不安薬などが使用されます。トゥレット症候群
抗ドーパミン作用の強い神経遮断薬など薬を服用して、症状を改善させます。また、薬物療法や併発症に応じた治療を行う場合もあります。 トゥレット症候群は、症状の悪化・改善を繰り返しながらも10歳代後半には改善する場合が多いです。 しかし、完治することはありません。学習障害(LD)
さまざまな症状があるので、個人の障害に適した環境をつくり、支援してあげることが大切になってきます。 (例)運動するのが困難・・・ラジオ体操などの簡単な運動を一緒に行って教えてあげる。 話すことが困難・・・・・・否定せずに言葉を付け足してあげるようにする。 学習障害をもつ人には、愛情をもって接することも大切になってきます。特に、家族の理解と支援が重要で、甘やかすようなことはせず、問題を放置せずに一緒に考える必要があります。 学習障害の治療は、教育面での指導が中心となりますが、学習能力を高める効果はあまり期待できません。しかし、注意力や集中力を高めることができる薬物療法などもあります。 また、問題行動となってしまう対応・行動を、少しずつ改善して行く「行動療法」や、会話の中から問題点を見つけていく「心理療法」などもあります。ADHD(注意欠陥多動性障害)
ADHDを完治する治療法は、まだ見つかっていません。しかし、生活を送りやすくするための治療を行うことで、人との関わりも、本人と家族の負担も軽減されます。 治療方法は、薬物療法・心理療法・食事療法などがありますが、症状を軽減する環境づくりも大切です。- 薬物療法
- 薬物療法により症状を改善することで、学習や仕事の能力・考え方・行動・他の人との関わり方など多くの面で効果が出てきます。 主にADHD治療で使用されている中枢神経刺激薬(メチルフェニデートなど)は、ノルアドレナリンとドーパミンの取り込みを抑制することで、神経伝達物質の不足が改善され、ADHDの症状が改善するとされています。
- 心理療法
- 心理療法には、行動療法・認知行動療法などがあります。
ADHDの人は、失敗も多く自己評価の低い人も多くいます。自己評価を高めて心のケアをしていくことは、今後の不安を取り除く面でもとても大切です。
- ●行動療法
- 問題となる行動を改善するために、実践で身につけていきます。本人の力を引き出しながら、問題行動を 良い方向に導いていきます。良く出来たときには褒めてあげることで、本人の自信にもつながっていきます。
- ●認知行動療法(認知療法)
- ADHDの特性を理解したうえで、問題行動の認知の仕方を変えていきます。問題行動をどう捉えるかによって、 感情や行動にも変化が現れ、次第に感情をコントロールできるようになっていきます。
- ●食事療法
- ADHDの問題行動は、砂糖や食品添加物の過剰摂取も関係していると考えられています。 食事療法は、これらの摂取を控えるようにして、バランスの良い食事を心がける治療法です。